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東京地方裁判所 昭和51年(ワ)10160号 判決

原告

瀬戸嘉造

瀬戸多喜子

右両名訴訟代理人

内藤功

外三名

被告

田中建設株式会社

右代表者

田中一利

右訴訟代理人

大政満

外二名

主文

被告は、原告瀬戸嘉造に対し金一七、二四四、五三三円、同瀬戸多喜子に対し金一、五〇〇、〇〇〇円及びこれらに対する昭和四八年五月二八日から各完済まで各年五分の割合による金員を支払え。

原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用はこれを三分し、その一を被告の、その余を原告らの負担とする。

この判決は、原告ら勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  申立

一  原告

1  被告は、原告瀬戸嘉造に対し金五六、六四九、一〇〇円、原告瀬戸多喜子に対し金三、〇〇〇、〇〇〇円及びこれらに対する昭和四八年五月二八日から各完済まで各年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  主張

一  請求原因

1  原告嘉造は、昭和四八年五月二七日午前一〇時頃、東京都豊島区東池袋一丁目一三番四号で被告の行う第一坂田ビル新築工事の現場において、外部壁仕上作業に従事中、足場の三階部分から足場板と共に地上に転落し、第一腰椎圧迫骨折、外傷性脊髄損傷、骨盤骨折、右手関節複雑骨折の傷害を負つた(以下「本件事故」という。)。

2  本件事故は、右現場において被告の設置管理する足場(以下「本件足場」という。)に瑕疵があつたことによる。

労働安全衛生規則では、足場は丈夫な構造でなければならず、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には手すり等を設け、床材は転位し又は脱落しないよう二以上の支持物に取付けなければならないものとされている。しかるに、本件足場は、別紙図面一のとおり、原告嘉造が転落した箇所において約3.4メートルにわたり二階及び三階部分の足場板が常時取外され、この開口部を材料取込口としてウインチで一輪車を吊上げて材料等の揚降しが行われ、右開口部の両端には手すりもなく、通行止めとはされておらず、事故当時には約四メートルの長さの足場板が一枚敷かれていただけであつた。原告嘉造は、右開口部に面する建物壁面の飾り窓仕上作業を行うために、既に敷かれていた足場板だけではたわむので、もう一枚の板を敷こうとし、足場の柱になつているパイプを抱くようにして身体を固定し、もう一枚の足場板を左から右とへずらせて行つたところ、この板が落下したため、これに伴つて転落した。

従つて、被告は、民法第七一七条により原告らに対し損害賠償の義務がある。

3  原告嘉造は、訴外島原建設有限会社(以下「訴外会社」という。)に常傭されていた左官工であり、本件現場においては、訴外会社の元請人である被告の現場監督高緑勇一指揮監督の下に左官工事に従事していたものであつて、被告との間には使用従属の関係がある。このような場合、被告は、下請の労働者たる原告に対し安全保護義務を負つている。

しかるところ、前記のとおり、被告は、本件開口部において墜落の危険があるのに手すりも設けず、通行禁止ともせず、床材を支持物に取付けてもいなかつた。また、足場上で作業を開始するに際し、床材の損傷、取付及び掛渡しの状態について点検し、異状を認めたときは直ちに補修しなければならないのに、本件開口部において床材の取外しという重大な異状を認めながら何ら補修をしなかつた。

足場の組立及び解体の安全管理については、被告の安全監理者は、左官である原告嘉造に足場の一部組立に当るような作業をさせてはならず、また、それをせざるをえないような状況にしておいてはならなかつた。さらに、足場の組立解体のような特に危険な作業をさせるためには、特に安全教育を徹底し、法規の要求する厳格な安全手順に従つて作業させなければならなかつた。しかるに、被告の安全監理者は、これらの義務を怠り、慢然と原告嘉造をして本件開口部に足場板を敷かせるという足場の一部組立に当る作業を行わせた。

被告は、以上の安全保護義務に違反したものであり、その結果本件事故を惹起したのであるから、原告らに対し損害賠償の義務がある。

4  本件事故により原告嘉造に生じた損害は、次のとおりである。

(一) 逸失利益

四〇、八二七、五〇〇円

(1) 同原告は、本件事故当時満三九才(昭和九年九月二一日生)の健康な労働者であつたが、本件事故により労働能力を全く喪失し、将来稼働して賃金収入を得ることは不可能となつた。同原告の就労可能期間中の得べかりし賃金は、少なくとも年額二、三七〇、八〇〇円である(別表1)。

(2) 三九才男子の就労可能年数は、二八年間である。

(3) 前記(1)の金額をもとにして、前記(2)の期間年五分の割合による中間利息を新ホフマン方式により控除して計算すると、同原告の逸失利益は、四〇、八二七、五〇〇円となる(別表2)。

(二) 付添費用

一四、二七三、六〇〇円

(1) 同原告は、外傷性脊髄損傷による極めて重度の後遺症を残す患者であり、生涯付添を必要とし、現在妻である原告多喜子が付添つているが、その費用は日額二、〇〇〇円に相当する。

(2) 三九才男子の平均余命は三四年間であり、原告嘉造には今後三四年間付添が必要となる。

(3) そこで右金額及び期間につき年五分の割合による中間利息を新ホフマン方式により控除して計算すると、付添費用は、一四、二七三、六〇〇円となる(別表3)。

(三) 慰藉料 七、〇〇〇、〇〇〇円

同原告は、極めて重度の後遺症を残す患者であり、下肢の運動機能障害、膀胱障害、直腸障害、生殖器障害の後遺症による苦痛を一生背負つて生きて行かなければならない。右後遺症の障害等級は、少なくとも身体障害者等級表三級に相当する。また、同原告の入院生活は三年余にわたつた。以上の事実を考慮すれば、同原告の慰藉料は、右金額が相当である。

5  本件事故により、原告多喜子は、夫を重度身体障害者とされ、夫に付添い、看病し、長期間夫と苦しみを共にしなければならないので、その精神的損害は、少なくとも三、〇〇〇、〇〇〇円に相当する。

6  よつて、被告に対し、原告嘉造は、前記4(一)ないし(三)の合計六二、一〇一、一〇〇円から既に受領した昭和五一年度までの労働者災害補償保険金合計五、四五二、〇〇〇円(昭和四八年度六七二、〇〇〇円、同四九年度一、一八八、〇〇〇円、同五〇年度一、九三二、〇〇〇円、同五一年度一、六六〇、〇〇〇円)を差引いた五六、六四九、一〇〇円、原告多喜子は、前記5の三、〇〇〇、〇〇〇円及びこれらに対する本件事故の翌日である昭和四八年五月二八日から各完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する答弁

1  請求原因1の事実中、原告嘉造が原告主張の日時場所において転落事故に遭つたことは認めるが、同原告の傷害の程度は不知。

2  同2の主張につき、本件足場に瑕疵があつたことは否認する。

本件足場は、別紙図面二のとおり、新築建物の間口7.9メートルの壁面に、材料取込口部分を除いて設置されていたが、各階につき幅0.762メートル、長さ1.82メートル、高さ1.7メートルを一単位とする枠組を組合せた形で設けられ、足場のまわりにはセーフテイ・ネツトが張られ、かつ、その外側はシートにおおわれていた。また、材料取込口は、建物壁面にそつて1.5メートルの長さにわたり足場が設けられていなかつた場所であり、ここを利用して下から上へ材料を運搬し、各階の窓から材料を運び入れるためのものであつた。本件工事現場のように小さい敷地の所では、足場と別の場所に材料取込口を設けることは不可能であり、本件の位置に材料取込口を設けたことは本件足場の瑕疵とはならない。このように材料取込口は、ここに足場板を渡して通行したり、作業したりする場所ではないにもかかわらず、原告嘉造は、三階飾窓部分を塗る作業に必要なものを置くために、材料取込口に既に渡してあつた足場板の上にもう一枚の足場板をかけようとし、後向きのかがんだ姿勢で股の間を通して足場板をずらせて行つたところ、その足場板がずり落ち、足場板ごと転落したものである。

3  同3の主張につき、原告嘉造と被告との間に使用従属の関係があつたことは否認する。

被告は、本件工事を総工費三八、〇〇〇、〇〇〇円で注文主から請負つたが、その内左官工事を代金一、九〇〇、〇〇〇円で訴外会社に請負わせ、さらに訴外会社は、その一部を同原告に請負わせていた。訴外会社は、左官工事を業とする会社であり、被告以外の者からも仕事を請負つており、本件工事については完成の期限のみ被告より注文されていたが、それ以外の作業の遂行についての一切は任されていた。また、被告の現場監督高縁勇一もただ見まわりとして現場に顔を出したにすぎず、同原告らに何らの指揮監督を行つていなかつた。

従つて、被告は、同原告に対し安全保護義務を負わない。

4  同4及び5の事実は不知。

三  抗弁

1  仮に本件足場に何らかの瑕疵があつたとしても、本訴は、事故の日である昭和四八年五月二七日から三年以上を経過した昭和五一年一一月一七日に提起されているので、本訴請求は、時効により消滅している。

2  本件事故は、前記二2のとおり、原告嘉造が足場板を後向きで股の間を通すという非常識な方法をとつたために起つたものである。また、本件現場には訴外会社の指揮者右田清美がいたから、同原告は、危険を感ずれば、その指揮を受けるべきであり、同人に声をかけて足場板をかけることを手伝つてもらえば本件事故は避けられたはずである。これらは同原告の重大な過失であり、損害額決定の際大幅に斟酌されるべきである。

3  原告嘉造は、次の各金員を受領した。

(一) 昭和四八年五月から昭和五一年五月までの休業補償費

合計 四、〇四四、七四三円

(二) 昭和五〇年三月から昭和五一年六月までの看護料

合計 五一〇、六五八円

(三) 障害特別支給金

八八〇、〇〇〇円

また、同原告は、昭和五一年七月二一日から一年につき一、四一一、七二一円の給付金を受けるので、その現価は、同原告の昭和五一年七月以降の就労可能年数二六年分の年金をライプニツツ方式で計算した二四、四一四、三〇二円である(別表4)。

以上の金額は、損益相殺として損害額から控除されるべきものである。

四  抗弁に対する答弁

1  抗弁2について、原告嘉造に過失があつたとの点は否認する。

同原告転落の状況は、前記一2のとおりであり、同原告は足場板を渡すについて相当な注意を払つたが、本件足場に瑕疵があつたために転落したものである。

2  抗弁3(一)ないし(三)の金員を原告嘉造が受領したことは認める。

しかし、同(二)については、同原告の請求する付添費用は、看護料を除いた家族付添費であり、看護料はもともと請求に含まれていないから相殺の対象とならない。同(三)の障害特別支給金は、損害の填補を目的とするものではないから、相殺の対象とならない。

昭和五一年七月二一日障害補償年金一、四一一、七二一円の給付決定がされ、その後支給がされていることは認めるが、将来の受給分は相殺の対象とならない。

五  再抗弁

原告らは、昭和五一年五月一九日に被告に到達した郵便で、被告に対し、本件事故による損害の賠償について催告し、次いで同年一一月一七日本訴を提起したから、消滅時効は中断している。

第三  証拠〈省略〉

理由

一原告嘉造が原告主張の日時場所において転落事故に遭つたことは当事者間に争いがなく、〈証拠〉によれば、同原告は、右事故により第一腰椎圧迫骨折、外傷性脊髄損傷、骨盤骨折、右手関節複雑骨折の傷害を負つたことが認められる。

二1  〈証拠〉によれば、本件足場は、被告が、訴外坂田興業株式会社から請負つた第一坂田ビル(六階建)新築工事のために、訴外戸崎建設株式会社に請負わせて組立てさせたものであつて、間口(建物の側面に平行した左右の長さ)が1.82メートル、奥行(通路部分の幅)が0.762メートル、高さが1.7メートルを一単位とする金属製の枠組を組立てて行く方法により作られていたこと、右新築建物敷地の道路に面する部分の長さは8.528メートルであり、ここに別紙図面二のとおり右枠組が向つて左の端から一単位、1.5メートルをへだてて更に三単位設置されていたこと、右の幅1.5メートルの空間は、足場がなく開口部となり、この空間をウインチで建築材料を揚降しする材料取込口としていたこと、左右の足場部分が右の開口部に接する境には柵を設けたり、綱や網を張つたりした設備はなかつたことが認められる。

〈証拠判断略〉

2 〈証拠〉によば、被告は、本件の新築工事のうち左官工事を訴外会社に請負わせ、原告嘉造は、訴外会社に属する左官工として昭和四八年四月から左官工事に従事していたこと同年五月二七日午前一〇時頃、同原告は、新築建物前面の向つて右側に設置された足場の三階部分にいたが、建物前面飾り窓の左官工事を行うために、材料を入れた取り舟と称する器具を開口部に渡した板の上に置ぐ必要が生じ、そのとき既に渡されていた板は、一枚で、取り舟を置くとその重さでたわむ危険があつたので、もう一枚の板を渡して補強しよすと思い、足場上で開口部に背を向け、もう一枚の足場板(長さ四メートル、幅0.25メートル、厚さ0.025メートル)を既に敷いてあつた足場板の上に胯間を通してずらせて行つたところ、前者の板の先端が後者の板の上からずれ落ち、これに気づかなかつたため、前者の板の手元の方の端で身体をはね上げられ、この板と共に地上に転落したことが認められる。

〈中略〉

3 以上の事実よれば、前記開口部は材料取込口で、その性質上足場板を設けてない空間であることが必要であつたとはいえ、左右の足場から開口部に接する境には、足場から開口部への転落を防止するための柵、綱、網等の設備がなく、原告嘉造の転落は、このような設備により防ぎえたものと認められる。そして、〈証拠〉によれば、左官工事を行うためには、足場の開口部に接する部分に位置して、開口部に足場板を渡すことも当然に予想された必要な行為であつたことが認められる。そうだとすると、後記のとおり同原告の足場板の渡し方に本件事故の一因があつたとしても、本件足場は、前記の点において、瑕疵があつたものというべきであり、被告には民法第七一七条第一項による損害賠償の責任がある。

三本件訴訟が本件事故の日である昭和四八年五月二七日から三年以上を経過した昭和五一年一一月一七日に提起されていることは本件記録上明らかであるが、〈証拠〉によれば、原告らの代理人山田裕祥は、被告に対し、昭和五一年五月一七日付郵便により本件事故による原告らの損害の賠償を催告し、同郵便は、同年一九日被告に到達したことが認められるので、本件訴訟は、右催告の時期から六か月以内に提起されたものであるから、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は中断している。

四原告嘉造の損害について検討する。

1  〈証拠〉によれば、同原告は、本件事故当時、三八才であり、左官工として一か月一八〇、〇〇〇円程度の収入を得ていたが、本件事故以後その労働能力を全く喪失したことが認められる。

〈証拠〉(休業補償給付請求書)には、同原告の昭和四八年三月から五月までの収入として右金額を下まわる額の記載があるが、同原告本人の供述によれば、右は、訴外会社の依頼により実際の金額を下まわるものを記載したことが認められるので、同原告の収入を認定する的確な資料とはならない。

そこで、同原告の就労可能時期を六七才までとすると、その就労可能年数は、二九年間となるので、その間年五分の割合による中間利息をライプニツツ方式により控除して計算すると、同原告の逸失利益は、三二、七〇四、七一八円となる(別紙計算書1)。

2  〈証拠〉によれば、同原告は、本件事故時から昭和四八年七月三一日まで池袋病院に、同日から昭和五一年六月三日まで山梨療養所に入院し、その間妻である原告多喜子の付添を受けていたこと、退院後も原告嘉造は、今後元の状態に戻ることの望めない脊髄損傷による体幹機能障害を有する等級三級の身体障害者であり、終生原告多喜子の付添を必要とすることが認められ、右事実によれば、その費用は、本件事故後三年間は一日二、〇〇〇円、それ以後は一日一、五〇〇円と認めるのが相当である。

厚生省発表の昭和四八年簡易生命表によれば、三八才男子の平均余命は約三五年であるので、前記金額をもととして右期間につき年五分の割合による中間利息をライプニツツ方式により控除して計算すると、付添費用額は、九、四六一、八六四円となる(別紙計算書2)。

3  〈証拠〉により同原告が生涯元の状態に戻ることの望めない下肢の運動機能障害、膀胱・直腸・生殖器障害を有することが認められることと前記2の入院期間を考慮し、同原告の慰謝料は七、〇〇〇、〇〇〇円を相当と認める。

五前記四の事実によれば、原告多喜子に生じた精神的損害は、金銭に見積つて三、〇〇〇、〇〇〇円と認めるのが相当である。

六原告嘉造の転落の状況は前記二2のとおりであるところ、同原告が足場部分から開口部の方に向いて足場板を渡して行つたならば足場板の先端がずれ落ちで行くことは容易に感知でき、これに対応して行動をとり転落を防ぐことができたのであるから、同原告の足場板の渡し方も本件事故の一因をなしており、同原告には本件事故について過失があつたものというべきであり、右過失による減額の割合を五割とするのが相当である。

従つて、原告らの請求しうる損害額は、過失相殺により次のとおりとなる。

原告嘉造の損害額(前記四1ないし3合計四九、一六六、五八二円の五割)   二四、五八三、二九一円

原告多喜子の損害額(前記五の金額の五割) 一、五〇〇、〇〇〇円

七原告嘉造がこれまで労働者災害補償保険から、①昭和四八年五月三〇日から昭和五一年六月四日までの休業補償として四、〇四四、七四三円、②昭和五〇年三月から昭和五一年六月までの看護料として五一〇、六五八円、③障害特別支給金として八八〇、〇〇〇円を受領したことは当事者間に争いがない。

右のうち、①は前記六のうち前記四1に当る損害から控除すべきものであるが、②は同原告の請求には含まれていないものであり、③も労働者災害補償保険法第二三条第一項の労働福祉事業として行われるもので、同原告の請求する損害の填補とは性質が異なり、これらは、損益相殺として同原告の本訴請求損害額より控除するのは相当でない。

次に、同原告が昭和五一年七月二一日障害補償年金一、四一一、七二一円の給付決定を受け、その支給を受けていることは当事者間に争いがなく、〈証拠〉によれば、右年金は、本件口頭弁論終結時までの間、昭和五一年中に四七〇、五七三円(別紙計算書3)、昭和五二、五三年中にそれぞれ一、四一一、七二一円、以上合計三、二九四、〇一五円が同原告に支払われたものと認められるので、右金額は、前記六のうち前記四1に当る損害から控除すべきである。

なお、本件口頭弁論終結後受領すべき年金額は、同原告の損害額から控除すべきものではないと解する。

従つて、同原告の請求しうる損害賠償額は、前記六の二四、五八三、二九一円から前記休業補償金四、〇四四、七四三円及び既に受領した障害補償年金三、二九四、〇一五円を控除した一七、二四四、五三三円となる。

八以上の次第で、被告は、原告嘉造に対し一七、二四四、五三三円、同多喜子に対し一、五〇〇、〇〇〇円及びこれらに対する本件事故の日の翌日である昭和四八年五月二八日から各完済まで民法所定の各年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があるので、原告らの請求を右の限度で正当として認容し、その余を失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条及び第九三条を、仮執行宣言につき同法第一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(桜井文夫)

計算書、図面一、二〈省略〉

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